異国ポピュラー音楽館

非 英 語 圏 の ポ ッ プ な 音 楽 を 中 心 に 、ア ル バ ム の 感 想 な ど を 書 い た ブ ロ グ で す 。

アラブ・ミュージック その深遠なる魅力に迫る

アラブ・ミュージック―その深遠なる魅力に迫る
音楽評論家、関口義人氏の編纂による本(2008年)。

広大なアラブ世界の古典音楽から
現代流行音楽まで、幅広く紹介し、
その魅力に迫る、アラブ音楽の入門書です。


::目次::

はじめに
第一章 アラブ音楽の見取り図 古典音楽/松田嘉子
第二章 フェイルーズへの旅/石田昌隆
第三章 アラブの楽器と音楽構造/若林忠宏
第四章 ポップスに聞くアラブ・アンダルースのこだま/北中正和
第五章 アルジェリアのポップ音楽/粕谷祐己
第六章 現代アラブポップスに見える民衆の心象に迫る/中町信孝
第七章 アラブとヨーロッパ 異質な音楽文化の交差と融合/松山晋也
第八章 モロッコのグナワにおける現代アラブ音楽の新たな潮流/サラーム海上
第九章 中東の音楽ワークショップ Ormuz から/横川理彦
第十章 アラブ世界周辺の音を巡って トルコ、イランの音楽の伝統と現在/関口義人


この本は、2006年1〜3月に開催された、国際交流基金主催による
中東理解講座の全10回の講義についてまとめられたものだそうです。


第一章と第三章は、楽器の音付きでないとわかりにくいのですが(講義では楽器の生演奏もあったそうです)、
楽器の写真が満載で、第三章ではアラブ以外の国の楽器とも比較されていて面白いし、
第七章では、西洋のクラシック音楽が、その成り立ちから使用楽器に至るまで、
アラブ音楽からの影響を受けている、と言う記述があって、それは全く知りませんでした!

第二章は、レバノンの大御所歌手、フェイルーズのコンサートに辿り着くまでの旅ですが、
石田氏がフェイルーズよりも先に、アルジェリアのライ歌手、シェブ・ハレドに強いインパクトを感じたことから、
バルベス(フランス・パリのアラブ人街)⇒ベルゼンス(マルセイユのアラブ人街)⇒
オラン(アルジェリア西部の都市でライの聖地)を渡る「ライ」の旅から始まり、
続いて、アンマン(ヨルダン)⇒エルサレム(イスラエル)⇒アリーハ(エリコ、イスラエルのパレスチナ人街)⇒
ガザ(パレスチナ)⇒カイロ(エジプト)を渡る旅、その4年後ついにベイルート(レバノン)に上陸、
と言う3つの旅は、当時の街の様子や政治情勢が記されていて、大変興味深いです。

第五章のアルジェリアの音楽とその歴史も興味深いです。
ライ」が、アルジェリア国内の政治情勢と共に国際的に発展していった経緯や、
アルジェリアの原住民であるベルベル系カビル人の歌謡が、社会的・政治的テーマを歌ったものが多いことや、
エジプトの大衆歌謡「シャアビー」とは全く別物のアルジェリアの「シャアビー」(Ya Rayah はこのジャンルだそうです)。

フランスで行われたライのライブ・イベント「1, 2, 3 Soleils」の DVD は、ほしいなあ!!
あと、第二章でも紹介されたライの王様、ハレド(当時はシェブ・ハレド)の名盤「Kutche」(88年)は、安く入手できないだろうか??
と言うのも、同じくライ歌手シェブ・カデールのCDは、ブッ○オフで安く入手できたので・・・。

第六章の現代アラブポップスは、大きく分けて2つ、「シャバービー」(若者向けの音楽)と「シャアビー」(庶民的な音楽)。
その境界は曖昧になっていて、混じり合っているそうです。
エジプトの二大スター、アムル・ディアーブとハキームの曲は、同じ人が曲を書いていると言うのは知りませんでした! (汗)
また、衛星時代の到来により登場した「セクシーアイドル」たちは、耳の肥えたアラブ音楽ファンからは酷評され、
バッシングやスキャンダルも多いそうですが、これまでのアラブ芸能界にはいなかった新しいタイプのタレントと言うことで、
アラブの人達(とくに男性ファン)にとっては、新鮮だったのでしょうね。
でも、個人的には、「セクシー系」よりも、マルワやジャド・シュエイリーみたいな「お笑い系」の方が好きですが。 (笑)

第八章は、モロッコの黒人部族の末裔「グナワ族」の音楽
「グナワ」のフェスティバルや、グナワ族の儀式の模様が記されたもので、
その「グナワ」と言う音楽を管理人も聴いてみました。 確かに、アラブ音楽と言うよりも、アフリカ音楽の方が近いですね。
元々はオカルト的/サブカルチャー的な音楽だったそうですが、
今ではモロッコが国を挙げて世界へ発信している、と言うことで、そのグナワの DVD が出ていたら、見てみたいです!!

第九章は、中東3カ国(レバノン、シリア、ヨルダン)の若手音楽関係者らとの音楽交流の御話で、
その受講生の一人は、レバノンのヒップホップグループ「AKS'SER」のメンバーだそうです。
「AKS'SER」は、NHK-FM「アジアポップスウインド」でも紹介されていました。
管理人も、このグループのアルバムがほしいのですが、結局入手できずじまい・・・iTunes Store でも販売してくれないだろうか。


アラブ音楽の入門書として、いろいろな情報を得ることができ、とても勉強になりました。

が、アラブはアラブでも、アラビア半島南部の音楽については、触れられていませんでした。
原油高でバブル状態、神田うののゴージャス旅行でも話題になったドバイ(アラブ首長国連邦)や、
オリンピックの開催地に候補として名乗り上げているドーハ(カタール)、
ハンドボールで問題になったクウェートなどから、若手ポップ歌手が出てきたり、
サウジアラビアやイエメンあたりからサブカルチャー的な音楽が出てくる、なんて時代は来ないのだろうか?

本の始めの方にある、「アラブ・イスラーム世界」の地図が示しているように、
イスラム圏は「もう一つの世界の中心」であり、アメリカ同時多発テロ事件(9・11)以降、
アラブ世界に関心が高まりつつあるので、アラブ音楽の方ももっと関心が高まればいいなと思います。



※ この本で紹介された音楽について、動画を貼り付けておきます。


アラビア語圏で50年以上も絶大な人気を博している
レバノン人大物歌手フェイルーズ(فيروز)のライブ映像




アラブ・アンダルース音楽のライブ映像




1998年9月に行なわれた、フランスのライ(Raï / راي)の画期的イベント、
「1, 2, 3 Soleils」の映像 (Khaled, Faudel, Rachid Taha / Abdel Kader)




ベリーダンスの扮装で腰をくねらせ、街中を闊歩する映像が話題を呼んだ
エジプト人歌手ルビー(روبي)のデビュー曲 Enta Arif Leih ? (どうして分かるの)のビデオクリップ




モロッコの大西洋岸の街、エッサウィラで行なわれたライブ・イベント、
「Festival Gnaoua & Musique du Monde D'Essaouira」の映像


|Top|

コメント

この本結構勉強になりますよね。
本当に一筋縄ではいかないという感じです。
・・・アラブ・アンダルースの世界はちょっと奥が深そうで、現在手を出すか思案中です(笑)。

「アラブ・アンダルース」と言う音楽は、この本ではじめて知りました。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://hamehcheez.blog47.fc2.com/tb.php/602-01937591

Top

HOME

Author : kisara
トルコの男性歌手、タルカンの「Chu! Chu! は恋の合言葉」(Sımarıkと言う曲を聴いて、大きなカルチャーショックを受けたのがきっかけで、英語以外の外国語曲に興味を持つようになりました。